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公開日: 2023.02.11
更新日: 2026.01.16
少子高齢化が急速に進む日本では、シニア世代のインサイトを掴むことが事業やサービスの成否を左右します。
シニア世代のインサイトを把握する手法として、調査・リサーチがあります。
しかし「シニア向けのリサーチに取り組んだものの、インサイトを深掘りできなかった」「満足のいく結果が得られなかった」という声も少なくないでしょう。
シニアリサーチで成果を出すには、年齢だけで一括りにせず、自己認識・ライフスタイル・価値観の変化まで踏まえた調査設計が求められます。
この記事では、シニアインサイトの把握が必要な理由、購買行動に影響する4つの観点、具体的な調査手法、実施時の注意点、そして実際の事例まで詳しく解説します。

シニア向け調査・リサーチとは、シニア・中高年層の購買行動や意思決定プロセスを把握するための調査手法です。
単なる属性データの収集にとどまらず、健康状態や家族構成、就労・退職といった生活背景まで踏み込みます。
「なぜその選択をするのか」という行動の理由を明らかにする点が特徴です。
なお「シニア」の年齢定義は調査目的によって異なります。
マーケティングでは50代以降を含めるケースがある一方、統計上は65歳以上を「高齢者」として扱うのが一般的です。
少子高齢化が進む日本では、シニア市場を前提とした商品開発やコミュニケーション設計の必要性が高まっています。
総務省統計局の発表によると、65歳以上人口は3,619万人、総人口比は29.4%に達しました(2025年9月15日推計)。
画像引用:総務省統計局「高齢者の人口」図1、表2
シニアリサーチの手法は、定量(どれくらい)・定性(なぜ)・行動観察(実際にどう使うか)の3つに分類すると選定しやすくなります。
また、シニア層のデジタル利用は年々進んでいます。
画像引用:情報通信研究機構「高齢者のインターネット利用率」
令和5年の調査では、65〜69歳のインターネット利用率は87.7%に上りました。
60歳以上のスマートフォン利用比率も高く、オンライン調査やリモートでの実査が成立しやすい環境が整いつつあります。
調査の目的と対象者の条件に合わせ、最適な手法を組み合わせて設計しましょう。
シニアリサーチで成果を出すには、年齢や性別といった表面的な属性だけでなく、行動の背景にある動機や心理(インサイト)まで捉える必要があります。
シニア層は「自己認識」「ライフスタイル」「価値観」の3点で変化が起きやすく、この変化を前提とした調査設計が欠かせません。
出典:リサーチ・アンド・ディベロプメント
調査担当者によっては、シニア世代に向けた調査・リサーチにおいて、画一的な「シニア世代とはこうあるもの」といった認識をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
日本人の多くの方がシニア世代の父親像としてイメージする、国民的アニメ「サザエさん」一家の波平さんは54歳という設定になっています。しかし、 近年では50代で自分がシニアという認識をお持ちになる方は多くありません。
調査結果として、 60代より上の世代の方々は「シニア=私より上の世代」と認識しています。
画像引用:野村総合研究所「アンケート結果報告 変わるシニア世代の就業意識・行動~65歳が就業多様化の転換点~」
シニア期は、子育ての一区切りや働き方の変化によって生活の重心が変わりやすいタイミングです。
「自分のために使える時間」の配分が変わることで、情報収集から比較検討、購買に至るまでの行動パターンも変化します。
シニアリサーチでは、こうしたライフイベントの前後で「困りごと」や「優先順位」がどう変わったかを具体的に聞き分けることが有効です。
移動手段、健康管理、家事負担、家計の見通し、余暇の過ごし方など、生活に密着したテーマを掘り下げると、施策に落とし込める示唆が得やすくなります。
ライフスタイルや健康面の変化を背景に、シニア層の「何にお金と時間を使うか」という価値観も変わります。
健康・安心、家族との関係、社会とのつながりなどは、シニア期の意思決定に影響しやすいテーマです。
加えて、近年はデジタル利用も進んでいます。
前述の通り、65〜69歳のインターネット利用率は87.7%に達しました(65歳以上全体では60.9%)。
「デジタルは苦手」という前提だけで設計すると、実態とズレが生じる可能性があります。
価値観の変化とあわせて、情報接点をオンライン・オフラインに分けて捉えることが、シニアリサーチの精度を高めるポイントです。
シニアリサーチで購買行動を正しく理解するには、年齢そのものよりも「何が変化しているか」に着目する必要があります。
影響要因は以下の4観点で整理すると、購買のブレーキやアクセルとなる要素が見えやすくなります。
この4観点は独立ではなく、掛け合わせで購買行動の理由が明確になります。
シニアリサーチでは、どの観点が購買のきっかけになり、どの観点が障壁になるかを切り分けて整理しましょう。
シニアリサーチは「何を意思決定したいか」によって最適な手法が変わります。
定性(なぜ)・定量(どれくらい)・検証(使えるか)を組み合わせ、インサイトを再現できる形で捉えることがポイントです。
ここでは代表的な7つの手法を解説します。
1対1で対面またはオンラインで実施し、購買・利用の背景を深掘りする定性調査です。
インサイト探索やペルソナ仮説の検証、訴求の刺さり方を確認したい場面に向いています。
シニアリサーチでは、以下の設計ポイントを押さえると精度が高まります。
オースタンスでは、50〜70代が約75%登録している、趣味人倶楽部会員様へインタビューの実査から分析、レポーティングまで可能なサービスです。
検討中のサービスや機能のユーザビリティを、1対1で対面またはオンラインにて検証する調査手法です。
シニア向けのアプリやサービス開発では「文字を大きく」といったイメージが先行しがちです。
しかし先入観に基づく設計は、実際のシニア層が求めるニーズと乖離する可能性があります。
会員登録や購入導線の改善、フォーム最適化、アプリ機能の受容性確認に適しています。
設計時のポイントは以下のとおりです。
アウトプット例には、優先度付き改善リストや導線案A/Bの比較結果があります。
オースタンスでは、趣味人倶楽部運営ナレッジや他社企業様のサポートナレッジを活かし、新しく検討している機能のプロトタイプ設計から制作まで一貫して請け負います。
制作したプロトタイプを趣味人倶楽部の会員様にモニターしてもらうことで、サービス・機能の受容性検証が可能です。
顧客が置かれた状況を起点に「片づけたい用事(Job)」を定義し、商品が雇用される理由を構造化するアプローチです。
この手法は、クレイトン・クリステンセン氏が提唱した「Job理論」に基づいています。
Job理論では、顧客は商品を単純に購入しているのではなく、片づけたい用事(ジョブ)を解決するために商品を「雇用」すると考えます。
従来のニーズに基づくリサーチよりも、顧客状況の解像度を高く捉えられる点が特徴です。
新規事業の立ち上げや価値提案の再設計、既存サービスの伸び悩み要因を特定したい場面で有効といえるでしょう。
設計のポイントは以下のとおりです。
アウトプット例として、Jobステートメントや状況別セグメント、採用条件の整理が挙げられます。
ブランドや商品の認知度、購入・リピート率、顧客満足度など、数値で表せるデータを集計・分析する方法です。
従来のマーケティングでも広く活用されてきた手法で、市場規模感の把握やセグメント比較、仮説の検証、社内合意形成に向いています。
ただし定量調査はデータ量が多い一方、顧客の変化や状況を捉えにくい面があります。
シニア・中高年のインサイトをより深掘りするには、定性調査との併用が効果的です。
施策担当者や上長の納得感を得たいとき、全体傾向から仮説構築のヒントを得たいときに活用するとよいでしょう。
シニアリサーチ特有の設計ポイントは以下のとおりです。
前述の通り、65〜69歳のインターネット利用率は87.7%と高い一方、65歳以上全体では60.9%です。対象年齢に応じた設計が求められます。
複数名で意見交換を行い、相互作用から気づきを得る手法です。
訴求軸の発散や言い回しの比較、購入障壁の共通項を探索したい場面に適しています。
設計のポイントは以下のとおりです。
アウトプット例には、共感ワードや反発ポイント、合意されやすい条件の抽出があります。
封書やハガキ、カタログ同梱などで調査票を届け、回答を回収する方法です。
オンライン未利用層の回収や既存顧客の深掘り、同梱物(チラシ・冊子)の評価に向いています。
設計のポイントは以下のとおりです。
アウトプット例として、同梱物の理解度や改善要望、不満・誤解ポイントの回収が挙げられます。
電話で短時間のヒアリングを行い、その場で具体回答を得る手法です。
広告やDMへの反応確認、離脱理由の要点回収、簡易な仮説検証に適しています。
設計のポイントは以下のとおりです。
アウトプット例には、購入阻害の上位要因や問い合わせ・不安の頻出パターン、改善優先順位があります。
シニアリサーチは、同じ「シニア」でも身体状況・生活環境・デジタル利用状況が大きく異なります。
そのため、一般的なリサーチ設計の延長で実施すると回答品質の低下やサンプル偏りが起きやすい領域です。
以下のポイントを押さえることで、インサイトの取り違えを防ぎ、再現性のある示唆につなげられます。
これらの注意点を踏まえた調査設計が、シニアリサーチの精度を高める第一歩となります。
シニアリサーチは、調査して終わりではなく「施策の設計・優先順位・勝ち筋の仮説」に落とし込んで初めて価値が出ます。
ここでは活用シーン別に4つの事例を紹介します。
共通するポイントは、シニアを一枚岩で捉えず、過去の経験・生活状況・価値観まで含めて解像度を上げることです。
某大手シニア向けライフケア企業B社では、シニアの聞こえにまつわるマーケティング調査を実施しました。
目的は、準顕在層の獲得に向けた顧客解像度の向上です。
聴力に課題を感じながらも来店や購入などのアクションを起こしていない方へインタビューを行い、「なぜ行動を起こさないのか」という心理的構造を把握しました。
実施内容は、定性インタビュー調査による価値観や心理に関するインサイト把握、外部環境・心理状況を含めた非行動要因の把握、態度変容要因の抽出、打ち手の示唆出しです。
成果として、見えない心理的ハードルを特定できました。
今後のコミュニケーション開発や店頭体験改善に向けた示唆も抽出しています。
訴求メッセージと購買動機の方向性が明確になり、マーケティング施策の精度向上につながった事例です。
国立長寿医療研究センターの健康促進アプリ「オンライン通いの場」では、シニア領域の知見を踏まえたUI/UXエキスパートレビューを実施しました。
課題は、登録率・継続利用率が伸び悩んでいた点です。
シニア向けアプリ特有の継続利用を阻害する要因を整理する必要がありました。
調査の結果、初回体験でのつまずきが致命傷になりやすいことが判明しています。
特に新規会員登録導線の見直しが、継続利用に大きく寄与するという示唆が得られました。
改善提案として、シニアのオンボーディングにはツアー型チュートリアルの導入が有効であると示されています。
「登録→初回利用→継続」のどこで離脱しているかをファネルで分解し、先入観ではなくタスク完了率や迷い箇所の実測で判断することが、シニア向けUI改善の精度を高めるポイントです。
事例記事はこちら:
JTBの新しい食体験サービス「Living Auberge」では、富裕層シニアを対象とした定性調査を実施し、受容性検証を行いました。
課題は、シニア市場に新サービスを投入する際、誰がどんな状況でいくらで使うかが読めない点でした。
資産条件や開催頻度条件などの要件を設定し、状況・機会把握を通じて検証を進めています。
調査の結果、「シニア×富裕層」という括りだけでは不十分であることが明らかになりました。
食事とお金に対する価値観で層を分けると、利用可能性が大きく異なるという示唆が得られています。
この結果を踏まえ、想定ターゲットを「年齢」ではなく価値観の違いでセグメントし直しました。
どの層にどの訴求軸を当てるか、比較対象は何かを再設計することで、新規事業の精度向上につなげた事例です。
事例記事はこちら:
株式会社SYLAのシニア向けIoT賃貸マンション「SENIOR TECH MANSION」では、調査から広告運用・サイト開発まで一貫した支援を実施しました。
まず趣味人倶楽部の会員へデプスインタビューを行い、ペルソナを設定しています。
サイト開発における項目調査、クリエイティブ調査、マンションコンセプト調査、機能ヒアリングなど、顧客起点の調査を複数実施しました。
広告運用では、Yahoo・Googleなどの運用型広告代行と各種A/Bテストを行い、週次で数値分析・結果報告を実施しました。
各種調査と広告配信を総合的に分析し、集客戦略を策定・実行しています。
さらにペルソナに向けたUI/UXで新サイトを開発しました。
親世代(70〜80代)向けに加え、子世代(40〜60代)向けの新たな訴求軸でサイトを追加開発しています。
結果として、サポート開始間もなく過去最大のお問い合わせ数・成約を実現しました。
オースタンスでは趣味人倶楽部の運営アセット、クライアント支援で得たナレッジ、シニア研究機関のデータを掛け合わせた調査を行っています。
リクルーティングから調査設計、インタビュー、分析、レポーティングまで自社で一貫して対応。最終的には事業開発の示唆につながるレポートを納品します。
シニアリサーチは、被験者募集(リクルーティング)の設計で結果が大きく変わります。
調査目的や被験者要件に合わせて、3つのパターンから最適な方法を選定します。

調査結果に対して本質を捉える分析手法を用い、事業開発に活かせる示唆まで整理してレポーティングします。
定性インタビュー(事業機会把握/JTBD抽出メニュー)では、調査サマリーだけでなく今後の事業開発に活かせる示唆を出します。
レポートには以下のような内容が含まれます。
また、定量アンケートの分析・納品にも対応しています(オプション)。
調査の概要・進め方、サービスコンセプトの受容性、新しい活動への探究度合い、サービス提供主体の検証など、複数のトピックに分けて分析・整理します。
ページ数は目的や手法によりますが、平均50ページ以上のレポートを納品しています。
少子高齢化が進む日本において、シニア市場の開拓は事業者・サービス提供者にとって避けては通れないテーマです。
シニア世代への調査・リサーチを行う際には、現代のシニアが持つ自己認識の変化を理解する必要があります。
さらに、年齢に伴うライフスタイルや価値観の変化を踏まえ、インサイトを深掘りすることが求められるでしょう。
オースタンスでは、定量調査、定性調査、UI/UX調査に対応しています。
調査結果を活かした事業開発サポートも支援可能です。
シニア向けの調査・リサーチを検討している方は、日本最大級のシニアSNS「趣味人倶楽部」の運営で培った経験と実績を持つオースタンスへご相談ください。

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